上場審査等に関するガイドラインIIIの3 2.~6.
1. 企業の存続性
事業活動の存続に支障を来す状況にないこと
(1)新規上場申請者の企業グループの損益又は財政状態の見通しが向上する見込みであること。この場合において、次のa又はbに該当するときは、当該損益及び財政状態の見通しが向上する見込みがあるものとして取り扱うものとする。
- a 経営計画において、申請事業年度以降、持続的成長を達成することができる合理的な見込みがあるとき。
- b 将来において持続的成長が見込まれる先行投資型企業の場合にあっては、経営計画において、申請事業年度から起算して5年以内に当期純利益が計上できる見込みがあるとき。
(2)経営計画の基礎となっている競争優位性及び事業環境について、合理的な根拠を有すること。
(3)経営計画の実現に新規上場申請者の企業グル向けた社内の人員体制及び設備の構築について、現状及び計画の根拠に疑義を抱かせるものでないこと。
(4)ープの主要な事業活動の前提となる事項について、その継続に支障を来す要因が発生している状況が見られないこと。
2. 健全な企業統治及び有効な内部管理体制の確立
企業規模に応じた企業統治及び内部管理体制が確立し、有効に機能していること
(1)新規上場申請者の企業グループの役員の適正な職務の執行を確保するための体制が、次のa及びbに掲げる事項その他の事項から、相応に整備され、適切に運用されている状況にあると認められること。
- a 新規上場申請者の企業グループの役員の職務の執行に対する有効な牽制及び監査が実施できる機関設計及び役員構成であること。この場合における上場審査は、規程第436条の2から第439条までの規定に定める事項の遵守状況を勘案して行うものとする。
※規程第436条の2から第439条の内容は以下のとおりです。
・第436条の2
上場内国株券の発行者は、一般株主保護のため、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役(会社法第2条第15号に規定する社外取締役であって、会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第2条第3項第5号に規定する社外役員に該当する者をいう。)又は社外監査役(会社法第2条第16号に規定する社外監査役であって、会社法施行規則第2条第3項第5号に規定する社外役員に該当する者をいう。)をいう。以下同じ。)を1名以上確保しなければならない。
・第437条
上場内国株券の発行者は、次の各号に掲げる機関を置くものとする。
(1)取締役会
(2)監査役会又は委員会(会社法第2条第12号に規定する委員会をいう。)
(3)会計監査人
・第438条
上場内国株券の発行者は、当該発行者の会計監査人を、有価証券報告書又は四半期報告書に記載される財務諸表等又は四半期財務諸表等の監査証明等を行う公認会計士等として選任するものとする。
・第439条
上場内国会社は、当該上場内国会社の取締役、執行役又は理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他内国会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備(会社法第348条第3項第4号若しくは同法第416条第1項第1号ホに規定する体制の整備又はこれらに相当する体制の整備をいう。)を決定するとともに、当該体制を適切に構築し運用するものとする。
- b 新規上場申請者の企業グループにおいて、効率的な経営の為に役員の職務の執行に対する牽制及び監査が実施され、有効に機能していること。
(2)新規上場申請者の役員の相互の親族関係、その構成、勤務実態又は他の会社等の役職員等との兼職の状況が、当該新規上場申請者の役員としての公正、忠実かつ十分な職務の執行又は有効な監査の実施を損なう状況でないと認められること。この場合において、新規上場申請者の取締役、会計参与又は執行役その他これらに準ずるものの配偶者並びに二親等内の血族及び姻族が監査役、監査委員その他これらに準ずるものに就任しているときは、有効な監査の実施を損なう状況にあるとみなすものとする。
(3)新規上場申請者の企業グループがその実態に即した会計処理基準を採用し、かつ、必要な会計組織が、適切に整備、運用されている状況にあると認められること。
(4)新規上場申請者の企業グループにおいて、その経営活動その他の事項に関する法令等を遵守するための有効な体制が、適切に整備、運用されている状況にあると認められること。
(5)新規上場申請者及びその企業グループが経営活動を有効に行うため、その内部管理体制が、次のa及びbに掲げる事項その他の事項から、相応に整備され、適切に運用されている状況にあると認められること。
- a 新規上場申請者の企業グループの経営活動の効率性及び内部牽制機能を確保するに当たって必要な経営管理組織が、相応に整備され、適切に運用されている状況にあること。
- b 新規上場申請者の企業グループの内部監査体制が、相応に整備され、適切に運用されている状況にあること。
(6)新規上場申請者の企業グループの経営活動の安定かつ継続的な遂行及び内部管理体制の維持のために必要な人員が確保されている状況にあると認められること。
3. 企業行動の信頼性
市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと
(1)新規上場申請者の企業グループが、次のa及びbに掲げる事項その他の事項から、その関連当事者その他特定の者との間で、原則として、取引行為その他の経営活動を通じて不当に利益を供与又は享受していないと認められること。
- a 新規上場申請者の企業グループとその関連当事者その他特定の者との間に取引が発生している場合において、当該取引が取引を継続する合理性を有し、また、取引価格を含めた取引条件が新規上場申請者の企業グループに明らかに不利な条件でないこと。
- b 新規上場申請者の企業グループの関連当事者その他の特定の者が自己の利益を優先することにより、新規上場申請者の企業グループの利益が不当に損なわれる状況にないこと。
※1 「関連当事者」とは、財務諸表等規則第8条第17項に掲げる「関連当事者」を指します。
※2 「その他の特定の者」とは、関連当事者の範囲に含まれないものの、申請会社の企業グループと人的、資本的な関連を強く有すると考えられる者を指します(以下、「関連当事者」とあわせて「関連当事者等」という。)。
※3 「取引行為」とは、営業取引、資金取引、不動産等の賃借取引、産業財産権の使用に関する取引等を指します。なお、申請会社の企業グループが直接に取引行為を行っていなくとも、間接的に取引行為を行っているようなもの、また、正当な対価がなく単にサービスとして業務を提供しているものなども含みます。
※4 事業活動並びに投資活動及び財務活動をいいます。
(2)新規上場申請者が親会社等を有している場合(上場後最初に終了する事業年度の末日までに親会社等を有しないこととなる見込みがある場合を除く。)には、次のaからcまでに掲げる事項その他の事項から、新規上場申請者の企業グループの経営活動が当該親会社等からの独立性を有する状況にあると認められること。
- a 新規上場申請者の企業グループの事業内容と親会社等の企業グループの事業内容の関連性、親会社等の企業グループからの事業調整の状況及びその可能性その他の事項を踏まえ、事実上、当該親会社等の一事業部門と認められる状況にないこと。
- b 新規上場申請者の企業グループ又は親会社等の企業グループが、原則として通常の取引の条件と著しく異なる条件での取引等、親会社等又は新規上場申請者の企業グループの不利益となる取引行為を強制又は誘引していないこと。
- c 新規上場申請者の企業グループの出向者の受入れ状況が、親会社等に過度に依存しておらず、継続的な経営活動を阻害するものでないと認められること。
(3)新規上場申請者の企業グループの経営陣が金融商品市場に上場する責任及び意義に関する識見を有していること。
(4)次のaからcまでに該当しないこと。
- a 新規上場申請日以降、同日の直前事業年度の末日から3年以内に、合併(新規上場申請者とその子会社又は新規上場申請者の子会社間の合併及び規程第208条第1号又は第2号に該当する合併を除く。)、会社分割(新規上場申請者とその子会社又は新規上場申請者の子会社間の会社分割を除く。)、子会社化若しくは非子会社化又は事業の譲受け若しくは譲渡(新規上場申請者とその子会社又は新規上場申請者の子会社間の事業の譲受け又は譲渡を除く。)を行う予定のある場合(合併、会社分割並びに事業の譲受け及び譲渡については、新規上場申請者の子会社が行う予定のある場合を含む。)であって、新規上場申請者が当該行為により実質的な存続会社でなくなると当取引所が認めたとき。ただし、当該合併(合併を行った場合に限る。)が実体を有しない会社を存続会社とする合併であると認められる場合及び当該会社分割が上場会社から事業を承継する人的分割(承継する事業が新規上場申請者の主要な事業となるものに限る。)であると認められる場合は、この限りでない。
- b 新規上場申請者が解散会社となる合併、他の会社の完全子会社となる株式交換又は株式移転を新規上場申請日の直前事業年度の末日から3年以内に行う予定のある場合(上場日以前に行う予定のある場合を除く。)
- c 新規上場申請者の大株主、経営者、従業員その他特定者が行う株式の全部取得その他の方法による上場廃止を上場申請日の直前事業年度の末日から3年以内に行う予定のある場合
(5)新規上場申請者が買収防衛策を導入している場合には、規程第440条各号に掲げる事項を遵守していること。
- ※規程第440条の内容は以下のとおりです。
- ・規程第440条第1号
買収防衛策に関して必要かつ十分な適時開示を行うこと
- ・第2号
買収防衛策の発動及び廃止の条件が経営者の恣意的な判断に依存するものでないこと
- ・第3号
株式の価格形成を著しく不安定にする要因その他投資者に不測の損害を与える要因を含む買収防衛策でないこと
- ・第4号
株主の権利内容及びその行使に配慮した内容の買収防衛策であること
(6)新規上場申請者の企業グループが反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備し、当該関与の防止に努めていること及びその実態が公益又は投資者保護の観点から適当と認められること。
(7)新規上場申請者の企業グループにおいて、最近において重大な法令違反又は公益に反する行為を犯しておらず、今後においても重大な法令違反又は公益に反することとなるおそれのある行為を行っていない状況にあると認められること。
4. 企業内容等の開示の適正性
企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること
(1)新規上場申請者の企業グループが、経営に重大な影響を与える事実等の会社情報を適正に管理し、投資者に対して適時、適切に開示することができる状況にあると認められること。また、内部者取引等の未然防止に向けた体制が、適切に整備、運用されている状況にあると認められること。
(2)新規上場申請書類のうち企業内容の開示に係るものについて、法令等に準じて作成されており、かつ、次のaからcに掲げる事項その他の事項が、新規上場申請者及びその企業グループの業種・業態の状況を踏まえて、適切に記載されていると認められること。
- a 新規上場申請者及びその企業グループの成長可能性のある技術又はビジネスモデルの特徴、事業環境、本格的な事業展開までの行程及び進捗状況、財政状態・経営成績・資金収支の状況に係る分析及び説明、関係会社の状況、研究開発活動の状況、大株主の状況、役員・従業員の状況、配当政策、公募増資の資金使途等の投資者の投資判断上有用な事項
(3)新規上場申請者が、中期経営計画を適切に策定し、投資者への説明会等を行える状況にあること。
(4)新規上場申請者の企業グループが、その関連当事者その他の特定の者との間の取引行為又は株式の所有割合の調整等により、新規上場申請者の企業グループの実態の開示を歪めていないこと。
(5)新規上場申請者が当該新規上場申請者の議決権の過半数を実質的に所有している会社(以下「過半数所有会社」という。)を有している場合には、当該過半数所有会社の開示が有効であるものとして、次のa又はbのいずれかに該当すること。ただし、新規上場申請者と当該過半数所有会社との事業上の関連が希薄であり、かつ、当該過半数所有会社による新規上場申請者の株式の所有が投資育成を目的としたものであり、新規上場申請者の事業活動を実質的に支配することを目的とするものでないことが明らかな場合は、この限りでない。
- a 新規上場申請者の過半数所有会社(過半数所有会社に該当する会社が複数ある場合には、新規上場申請者に与える影響が最も大きいと認められる会社をいうものとし、その影響が同等であると認められるときは、いずれか一つの会社をいう。以下このa及びbにおいて同じ。)が発行する株券等が国内の金融商品取引所に上場されていること(当該過半数所有会社が発行する株券等が外国金融商品取引所等において上場又は継続的に取引されており、かつ、当該過半数所有会社又は当該外国金融商品取引所等が所在する国における企業内容の開示の状況が著しく投資者保護に欠けると認められない場合を含む。)。
- b 新規上場申請者が、その経営に重大な影響を与える過半数所有会社(前aに適合する過半数所有会社を除く。)に関する事実等の会社情報を適切に把握することができる状況にあり、新規上場申請者が、当該会社情報のうち新規上場申請者の経営に重大な影響を与えるものを投資者に対して適切に開示することに当該過半数所有会社が同意することについて書面により確約すること。
5. その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項
(1)株主又は外国株預託証券等の所有者の権利内容及びその行使が不当に制限されていないこと。
(2)新規上場申請者の企業グループが、経営活動や業績に重大な影響を与える係争又は紛争等を抱えていないこと。
(3)新規上場申請に係る内国株券等が、無議決権株式(当該内国株券等以外に新規上場申請を行う銘柄がない場合に限る。)又は議決権の少ない株式である場合は、次のaからhまでのいずれにも適合すること。
- a 議決権の多い株式等により特定の者が経営に関与し続けることができる状況を確保すること等が、株主共同の利益の観点から必要であると認められ、かつ、そのスキームが当該必要性に照らして議決権の多い株式等の株主を不当に利するものではなく相当なものであると認められること。この場合において、相当なものであるか否かの認定は、次の(a)から(c)までに掲げる事項その他の事項を当該必要性に照らして確認することにより行うものとする。
(a)当該必要性が消滅した場合に無議決権株式又は議決権の少ない株式のスキームを解消できる見込みのあること。
(b)極めて小さい出資割合で会社を支配する状況が生じた場合に無議決権株式又は議決権の少ない株式のスキームが解消される旨が定款等に適切に定められていること。
(c)当該新規上場申請に係る内国株券等が議決権の少ない株式である場合には、議決権の多い株式について、原則として、その譲渡等が行われるときに議決権の少ない株式に転換される旨が定款等に適切に定められていること。
- b 議決権の多い株式等を利用する主要な目的が、新規上場申請者の取締役等の地位を保全すること又は買収防衛策とすることでないと認められること。
- c 議決権の多い株式等の利用の目的、必要性及びそのスキームが、新規上場申請書類のうち企業内容の開示に係るものにおいて適切に記載されていると認められること。
- d 議決権の多い株式等の株主が新規上場申請者の取締役等でない場合には、次の(a)及び(b)に適合すること。
(a)議決権の多い株式等の株主の議決権行使の目的や方針が、当該必要性に照らして明らかに不適切なものでないと認められ、かつ、新規上場申請書類のうち企業内容の開示に係るものにおいて適切に記載されていること。
(b)新規上場申請者の企業グループが、議決権の多い株式等の株主(新規上場申請者の親会社等である場合に限る。)の企業グループとの間に、原則として、事業内容の関連性、人的関係及び取引関係がないこと。
- e 異なる種類の株主の間で利害が対立する状況が生じた場合に当該新規上場申請に係る内国株券等の株主が不当に害されないための保護の方策をとることができる状況にあると認められること。
- f 当該新規上場申請に係る内国株券等の発行者が次の(a)から(c)までに掲げる者との取引(同(a)から(c)までに掲げる者が第三者のために当該発行者との間で行う取引及び当該発行者と第三者との間の取引で同(a)から(c)までに掲げる者が当該取引に関して当該発行者に重要な影響を及ぼしているものを含む。)を行う際に、少数株主の保護の方策をとることができる見込みがあると認められること。
(a)親会社
(b)支配株主(親会社を除く。)及びその近親者
(c)前(b)に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等及び当該会社等の子会社
- g 当該新規上場申請に係る内国株券等が剰余金配当に関して優先的内容を有している場合には、原則として、上場申請日の直前事業年度の末日後2年間の予想利益及び上場申請日の直前事業年度の末日における分配可能額が良好であると認められ、当該内国株券等の発行者が当該内国株券等に係る剰余金配当を行うに足りる利益を計上する見込みがあること。
- h その他株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと認められる状況にないこと。
(4)新規上場申請に係る内国株券等が、無議決権株式である場合(当該内国株券等以外に新規上場申請を行う銘柄がある場合に限る。)は、次のaからeまでのいずれにも適合すること。
- a 極めて小さい出資割合で会社を支配する状況が生じた場合に無議決権株式のスキームが解消される旨が定款等に適切に定められていること。
- b 異なる種類の株主の間で利害が対立する状況が生じた場合に当該新規上場申請に係る内国株券等の株主が不当に害されないための保護の方策をとることができる状況にあると認められること。
- c 当該新規上場申請に係る内国株券等の発行者が次の(a)から(c)までに掲げる者との取引(同(a)から(c)までに掲げる者が第三者のために当該発行者との間で行う取引及び当該発行者と第三者との間の取引で同(a)から(c)までに掲げる者が当該取引に関して当該発行者に重要な影響を及ぼしているものを含む。)を行う際に、少数株主の保護の方策をとることができる見込みがあると認められること。
(a)親会社
(b)支配株主(親会社を除く。)及びその近親者
(c)前(b)に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等及び当該会社等の子会社
- d 当該新規上場申請に係る内国株券等が剰余金配当に関して優先的内容を有している場合には、原則として、上場申請日の直前事業年度の末日後2年間の予想利益及び上場申請日の直前事業年度の末日における分配可能額が良好であると認められ、当該内国株券等の発行者が当該内国株券等に係る剰余金配当を行うに足りる利益を計上する見込みがあること。
- e その他株主及び投資者の利益を侵害するおそれが大きいと認められる状況にないこと。
(5)その他公益又は投資者保護の観点から適当と認められること。
(出所:東京証券取引所「2014新規上場ガイドブック(JASDAQ編)」)
第1章『IPOの基礎』
第2章『上場前に留意すべき事柄』
第3章『上場の概要』
第4章『JASDAQ上場について』
第5章『マザーズ上場について』
第6章『株式上場関係書類について』
第7章『上場後に留意すべき事柄』
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