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関係会社・関連当事者に関する審査対象事項について

関係会社があること自体に問題はありません。ただし、申請会社のみの場合と関係会社などを含めて審査する場合では差異が生じる可能性があります。たとえば、申請会社単体では十分な利益を上げているが、子会社の赤字を合算すると利益が基準に届かない、といった場合です。このように、関係会社などを含めると公開が認められないケースもあるため、関係会社が重要な審査対象となっています。

取引内容、人事関係、株式の保有状況などが、申請会社と関係会社のあいだで利益操作が行われないであろう妥当なもので、関係会社に積極的な存在理由がある場合は、申請時に問題視されることはありません。

しかし、関係会社がある場合、申請時までに解決しなければならない問題が生じるケースがほとんどだと言えます。

関係会社に関する審査事項

以下に示したのは、関係会社の審査に関して解決すべき問題です。

関係会社の存在理由・性格を合理的に説明できるか

【補足】
子会社設立の趣旨と、別会社として存在する積極的な理由が必要となります。通常、企業の実態を把握するためには親会社と子会社は一体であるべきと考えられます。関係会社に実質的な効果がなく、利益が認められないといった場合、公開に当たり合併を求められることがあります。そのため、関連会社を別会社として存在させるためには相応の理由が必要となります。以下は、その理由としてよく挙げられるものです。

  • 親会社の賃金体系と切り離すことで妥当な賃金設定ができ、人事面で合理的な運営が行える。
  • 地域社会との関係上、地元会社としたほうがより多くの仕事を受注でき、地元の税法上の特典が受けられ、地域住民との連帯が図られる。
  • 官庁の許認可の関係上、受注などに支障が出る。
  • 税法上有利、あるいは特典を受けられる。
  • 責任の明確化が図られ、運営上効率的。

完全子会社か、そうでない場合の理由は合理的か

関係会社との取引内容・取引価格は妥当か

【補足】
取引価格は妥当である必要があります。親会社の都合で決定されている場合、または関係会社への取引価格と関係会社以外への取引価格が根拠なく差別されている場合などは問題となります。関係会社との取引は、基本契約に基づき、一定の方法に従って決定しなければなりません。
また、関係会社の期末在庫量が異常、取引金額の受渡方法・期間が不自然であるといった場合などは、関係会社との取引が問題視されます。

  • 利益操作の疑いはないか
  • 【補足】
    取引価格、在庫量、貸付金などを親会社の都合により操作することで、利益の圧縮や水増しがなされている場合は問題となります。

  • 関係会社の業績・財務内容は良好か
  • 【補足】
    関係会社の業績が悪い、債務超過であるといった状況で、それを負担する親会社に大きな影響を与える場合は問題となります。ただし、近い将来に赤字や債務超過が改善されることが確かであれば斟酌されるケースもあります。

  • 債務保証はあるか
  • 【補足】
    関係会社の借り入れについて、親会社が債務保証をしている額が大きく、万が一の場合に親会社に大きな影響を与えかねない場合は問題となります。

  • 関係会社への直接の貸付金はあるか
  • 【補足】
    金利、期間などの貸付条件が妥当でなければ問題となります。

  • 設備の賃貸関係はあるか
  • 【補足】
    賃貸についての条件が妥当でなければ問題となります。

  • 役員・従業員の兼任関係はどうか
  • 兼任役員の報酬はどうか
  • 【補足】
    兼任役員の報酬は正常でなければなりません。関係会社の業務にほぼ関与していない役員が多額の報酬を受けている場合などは問題となります。原則、親会社からのみとし、関係会社からの報酬はなくすべきです。

  • 関係会社の株式を申請会社の役員が保有していないか
  • 【補足】
    証券取引所は親会社の役員が関係会社の株式を保有していると利益操作につながる恐れがあるとしており、親会社の役員が所有する関係会社の株式の放出が求められます。これは、関係会社が配当を行えば親会社の役員の所有する株式にも配当が来ることになり、配当率などが恣意的に決められる恐れがあるためです。証券取引所は、関係会社の得た利益は親会社に帰属すべきであり、親会社の役員に帰属させるべきではなく、親会社の役員が関係会社に対し利害関係があると利益操作が行われる恐れがあると判断しています。

  • 関係会社が申請会社の株式を保有していないか
  • 【補足】
    子会社による親会社の株式保有は、自己株保有として会社法で禁止されています。また、資本の充実維持の要請から、関連会社に関しても原則として申請会社株式の保有は認められていません。

  • 申請会社の関係会社間の株式の保有状況はどうか
  • 【補足】
    連結対象になることを避けるために関係会社間の株式保有を操作している、ダミー会社を作り株式保有割合を操作している、といった疑いを持たれると、株式の保有状況の改善を求められます。

  • 連結対象となるか
  • 関係会社の株式を移動させた場合の取引価格は妥当か
  • 【補足】
    取引価格は妥当なものでなければなりません。特定の者が利益を受けるような株式移動は問題となります。子会社がある場合、あるいは今後設立する場合は、100%子会社とするほうが、問題が生じたとしても解決が比較的容易だと言えます。

  • 関係会社に対する承認事項や報告事項、監査などの定めが関係会社管理規定にあるか

関連当事者その他特定の者との取引等について

不動産などの賃貸借、金銭の貸借、債務保証などは、関連当事者その他特定の者との取引などでよく見られます。ただし、会社とのあいだで利益相反が起こる(可能性のある)ものは解消が要求されます。
「新規上場申請のための有価証券報告書」、上場後に毎期提出する「有価証券報告書」には「関連当事者情報」の項目があり、関連当事者との取引で重要なものは2期間分の取引内容が開示され、親会社、重要な関連会社については要約財務情報の開示が必要となります。そのため、利益相反的な取引や合理的な説明が難しい親会社あるいは関連会社がある場合は、上場申請日の属する事業年度の2期前以前に整理することが考えられます。

  • 整理のポイント
    関連当事者その他特定の者との取引を整理する場合は、関連当事者の範囲とその取引内容を把握し、取引の必然性、その影響度、第三者との取引と比較して合理的であるかがポイントとなります。
    また、役員との取引の場合は、その承認が取締役会で行われ、議事録で確認できるかなどがポイントです。

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